組織開発・エンゲージメント関連

彼は、たった一つの「誤解」で心を閉ざしていた

組織開発・エンゲージメント関連

彼は、たった一つの「誤解」で心を閉ざしていた

「私たちは、社員の本質を本当につかめているだろうか?」

組織には、時に目に見えない「誤解」という病が潜んでいます。今回は、この病によって輝きを失いかけ、そして、ほんの少しのきっかけで劇的に回復した、あるエース社員の面談室でのリアルなお話です。

先日、面談室でお会いした彼は、うつむき加減で声もか細く、明らかに元気がありませんでした。私が将来の姿について尋ねると、彼はぽつりとこう言ったのです。 「3年後には、自分はこの世の中にいないと思っています」 背筋が凍る思いでした。私はすぐさま人事担当の方に相談し、組織として彼を支えるための緊急会議が開かれました。

しかし、この話の裏側を紐解いた時、私は胸が締め付けられる思いがしました。 実は、彼は誰もが認める「腕利き」のエースだったのです。驚くべき速さで仕事を完璧にこなすため、他の人より早く帰社することが多かった。しかし、その姿が事情を知らない周囲の目には「あいつはサボっている」と映ってしまっていたのです。

心理学では、目に見える一部分の行動だけでその人の人格や態度を決めつけてしまう現象を「根本的な帰属の誤り(認知のバイアス)」と呼びます。また経営学的な視点で見ても、成果ではなく「職場にいる時間の長さ」を無意識に美徳としてしまう古い組織風土の名残が、彼の卓越した能力を孤立させ、心を蝕んでいました。

そこで私たちが取った行動は、決して大げさな制度改革ではありませんでした。 人事担当者はすれ違う時に少しだけ気にかける言葉を増やし、上司は疑いの目ではなく「信頼の目」で見守る。そして私はキャリアコンサルタントとして、もう一度彼の話をじっくりと聴く。やったことは、ただそれだけです。彼を見る「周囲の目」を、ほんの少し変えただけでした。

すると驚くべきことに、後日の再面談に現れた彼は、まるで別人のように生き生きとしていました。目には力が戻り、声には自信が漲っている。誤解という分厚い雲が晴れ、本来の輝きを取り戻した瞬間でした。

人は、大掛かりな制度や立派な言葉だけで動くわけではありません。 心理学でいう「肯定的なストローク(存在を認める働きかけ)」、つまり「あなたの頑張りを、私たちは知っているよ」という日々の小さな承認の積み重ねこそが、エンゲージメントの土壌を豊かにします。

経営者、人事担当者の皆様。すれ違う時のワンフレーズ、会議でのちょっとした労い。そんな小さな関心が、くすぶっているエースを救う特効薬になります。大切な社員の心に寄り添う一歩を、私たちi-テクセンスと共に踏み出してみませんか。

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