組織開発・エンゲージメント関連

その「足し算」、本当に今ですか?良薬の前に必要な「一杯の水」の話

組織開発・エンゲージメント関連

その「足し算」、本当に今ですか?良薬の前に必要な「一杯の水」の話

「若手の成長のために、新しい研修を導入しよう」 「離職率低下のために、あの最新ツールは効果的だろうか」

愛する社員のため、そして組織の未来のため、経営者や人事総務の皆様は日々、様々な施策という名の「足し算」を検討されていることと思います。その情熱と努力には、本当に頭が下がります。しかし、少しだけ立ち止まってみてください。その「足し算」、本当に「今」のタイミングでしょうか。

先日、あるIT企業の社長からご相談を受け、若手社員の皆様と1対1のキャリア面談を実施しました。社長の悩みは「真面目に頑張ってはくれているが、どこか余裕がなさそう。彼らの成長を加速させる施策を打つべきか迷っている」というものでした。

いざ、若手の皆さんと対話を始めると、そこには鬼気迫るほどの「必死さ」がありました。日々押し寄せるタスクをこなすだけで一日が終わっていく。心理学や経営学の視点で見ると、彼らの「認知リソース(脳の処理容量)」や「時間的資源」は、日々の業務という水でコップからすでに溢れかえっている状態だったのです。

そんな彼らに「もし今、新しいことを学ぶ時間があったら何がしたいですか?」と尋ねてみました。

返ってきたのは、意外にも「新しいスキルを学びたい」という前向きな言葉だけではありませんでした。「まずは、この仕事が自分のキャリアにとってどういう意味を持つのか、ゆっくり考える時間がほしい」「今の頑張りが、ちゃんと未来に繋がっているのか不安だ」という、心の奥底からの切実な声だったのです。

彼らは、学びたくないわけでも、成長したくないわけでもありません。ただ、栄養満点の良薬(新しい学び)を飲む前に、まずは喉の渇きを潤し、呼吸を整えるための「一杯の水(心の余裕と、現在地の確認)」を求めていたのです。

この結果を社長にご報告したところ、深く頷かれ、こうおっしゃいました。 「そうか、焦っていたのは私の方だったな。武器を渡すことばかり考えて、彼らのコップが溢れていることに気づけていなかった。施策の導入は少し先にしよう。まずは、彼らが安心して働ける雰囲気を作ること、そして彼らの声をもっと聞くことから始めよう」

この社長の決断は、まさに英断だったと確信しています。 組織開発やエンゲージメント向上において、私たちはつい何か新しい施策を「足す」ことばかり考えてしまいがちです。しかし、社員のキャパシティが限界を迎えている状態では、どんなに素晴らしい施策もただ流れ落ちていくだけになってしまいます。

「What(何を導入するか)」を考える前に、まず大切なのは、社員一人ひとりが「Where(今どこに立っていて)」「Why(なぜそう感じているのか)」を、私たちが真摯に「聴く」こと。そして時には、不要な心理的負担を「引く」勇気を持つことなのかもしれません。

新しいカーナビ(ツールや制度)を導入する前に、そもそもドライバー(社員)がどこへ向かいたいのか、そして今、心のガソリンは残っているのか。それを知ることが、エンゲージメントという名の長い旅路の、最も重要な第一歩です。

皆様の次の打ち手は、新しい「足し算」ですか?それとも、温かい対話という名の「一杯の水」を社員に手渡すことでしょうか。私たちi-テクセンスは、皆様が社員の皆様と心を通わせ、安心して未来を描ける土台づくりを、頼れる伴走者として全力でサポートいたします。

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