労務・コンプライアンス関連

「法律は守っている」のに、なぜ職場はギスギスするのか?

労務・コンプライアンス関連

「法律は守っている」のに、なぜ職場はギスギスするのか?

法令遵守の先にある「組織倫理」の重要性

人事・総務ご担当者の皆様、日々の奮闘、誠にお疲れ様です。「また法改正の対応か…」「ハラスメント研修を実施したのに、現場の雰囲気は一向に良くならない…」そんなジレンマを抱えていらっしゃらないでしょうか。ルールを整備し、法令遵守を徹底しているはずなのに、なぜか職場の空気は重く、優秀な人材が離れていく…。

それは、私たちが「コンプライアンス=法令遵守」という認識に留まってしまっているからかもしれません。

法律だけでは守れないもの

もちろん、法律を守ることは企業活動の大前提であり、最低限のラインです。しかし、法律の条文には書かれていない「グレーゾーン」にこそ、組織の健全性を蝕む問題が潜んでいます。

例えば、法律で明確に禁止される「パワハラ」には至らないまでも、高圧的な言動、皮肉や無視、過度なプレッシャーが日常化している職場を想像してみてください。従業員は萎縮し、「何を言っても無駄だ」「失敗したら責められる」と感じるようになります。これこそが、近年注目される「心理的安全性」が著しく低い状態です。

このような環境では、自由な発想やイノベーションは生まれません。それどころか、メンタルヘルスの不調や、優秀な人材の静かな離職(サイレント・リタイアメント)につながっていきます。「法律違反ではないから問題ない」という姿勢は、もはや通用しないのです。

「人的資本経営」と「組織倫理」

いま、「人的資本経営」が強く求められています。従業員を単なるコストではなく、価値創造の源泉である「資本」として捉え、その能力を最大限に引き出そうという考え方です。

この「人的資本」を活かす土壌こそが、法律を超えた「組織倫理」です。

キャリアコンサルタントの視点から見ても、従業員が真に能力を発揮できるのは、「ルールで縛られた」組織ではなく、「信頼関係で結ばれた」組織です。「この会社は、法律を守るだけでなく、人として従業員を大切にしてくれる」「ここでは安心して本音を話し、挑戦できる」――そう感じられる職場環境こそが、従業員のエンゲージメント(働きがい・貢献意欲)を引き出します。

DE&I(多様性、公平性、包括性)の推進も同様です。制度を整えるだけでなく、異なる背景を持つ一人ひとりが「尊重されている」と実感できる倫理観が組織に根付いていなければ、本当の意味での多様な活躍は望めません。

「守り」から「価値創造」のコンプライアンスへ

コンプライアンスを「違反を防ぐための守りのルール」とだけ捉えていると、窮屈な職場しか生まれません。

これからの人事・総務担当者の皆様に期待されるのは、「ルールの番人」であると同時に、組織と従業員の「信頼関係のファシリテーター」としての役割です。

「法律は守っている」という土台の上に、「私たちは何を大切にするのか」という倫理・価値観を対話によって築き上げていく。それこそが、従業員の「幸せ(Well-being)」と企業の持続的成長を両立させる、最強のリスクマネジメントであり、未来への投資ではないでしょうか。

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