「ぬるま湯組織」になっていませんか? ―― 心理的安全性の『誤解』を解き、成長を促す対話の技術
「最近、部下に厳しいことを言うとパワハラと言われそうで、遠慮してしまう」
「お互いの顔色を伺ってしまい、会議で本音の議論が生まれない」
経営者や人事、そして現場を預かるリーダーの皆様から、このようなため息交じりのご相談をよくお伺いします。
「心理的安全性」という言葉が広く知れ渡り、職場を温かく、働きやすい場所にしようと一生懸命に取り組まれてきたからこそ、今、この「事なかれ主義」や「ぬるま湯組織」という新たな壁に突き当たっているのではないでしょうか。その温かい試行錯誤は、決して無駄ではありません。ただ、少しだけ「ボタンの掛け違い」が起きているのかもしれません。
「心理的安全性」の本来の意味とは?
実は、心理的安全性とは「誰にでも優しく、お互いに遠慮し合う生ぬるい環境」のことではありません。
経営学や組織開発で提唱される本来の定義は、「成果を出すために、誰もが罰せられる不安を感じることなく、率直に意見や疑問を口にできる状態」を指します。
ここで重要なのが、「心理的安全性」と「目標への要求水準(パフォーマンスの高さ)」の両立です。
心理的安全性ばかりが高く、要求水準が低い状態は、まさに「ぬるま湯(快適ゾーン)」になってしまいます。組織が成長し、社員がキャリアを主体的に切り拓くために目指すべきは、心理的安全性も要求水準もどちらも高い「学習・成長ゾーン」なのです。
成長を促す「対話」へシフトする、今日からの一歩
では、ぬるま湯から「成長を促す対話」へとシフトするにはどうすればよいでしょうか。キャリアコンサルタントの視点から、日常の1on1や面談ですぐに実践できる「伝え方」のコツをご提案します。
ポイントは、人格や性格を否定する「ダメ出し」ではなく、客観的な事実を伝える「フィードバック」に徹することです。
× 避けてしまいがちな「ダメ出し」の例
「君はいつも主体性(やる気)が足りないね」
(※キャラクターや内面を決めつけるため、相手は心を閉ざしてしまいます)
〇 成長を促す「フィードバック」の例
「今回の会議で発言がなかったけれど、何か気になった点や別のアイデアはあったかな?」
(※具体的な行動や事実だけに焦点を当てて問いかけます)
「あなたの存在や存在意義は100%認めている。だからこそ、期待を込めて率直に伝えるよ」という姿勢を示すこと。この安心感(安全性)があるからこそ、高い基準(要求)を求める対話が初めて成り立ちます。
社員を大切に想うあまり、踏み込んだ発言をためらってしまうのは、皆様の「優しさ」と「誠実さ」の表れです。これからはその優しさに、ほんの少しの「率直さ」を混ぜてみませんか。お互いの成長を信じ、時に健全な衝突をも恐れない温かな組織づくりを、これからも一緒に目指していきましょう。


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