アンコンシャス・バイアスを「悪者」にしない ―― 違いを力に変えるための『自己認知』
「研修をやったら、かえって社内がギスギスしてしまったんです」
ある人事ご担当者様から、こんな切実なご相談をいただいたことがあります。
近年、多様性を活かす組織づくりの第一歩として、多くの企業で「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」研修が導入されています。しかしその後、現場で「それ、バイアスじゃないですか?」「そんな言い方は偏見だ」と、お互いを監視し、萎縮し合う「言葉狩り」のような空気が生まれてしまったというのです。
誰もが生き生きと働ける組織をつくろうと、日々一生懸命に人と組織に向き合っている皆様だからこそ、こうした予想外のきしみは本当に心苦しいものですよね。
実は、脳が生き残るための「正常な機能」
結論からお伝えすると、アンコンシャス・バイアスは決して「排除すべき悪者」ではありません。
心理学の視点から見ると、これは脳が日々流れ込む膨大な情報を瞬時に処理するための、きわめて正常な「効率化のシステム」なのです。「この人はベテランだからこうだろう」「若いからこうだろう」と過去の経験から自動的に推し量ることで、私たちの脳はエネルギーを節約しています。
つまり、生きるために脳に備わった「誰にでもある当たり前の機能」であり、これ自体をゼロにすることは不可能なのです。
「なくす」のではなく「気づく」こと
大切なのは、バイアスを無理に「なくそう」と躍起になることではなく、自分の中にある「ものの見方のクセ」に優しく目を向け、『自己認知』を深めることです。
「あ、今自分はこう思い込んでいたな」と立ち止まり、自覚する。そして、「私はこう思うけれど、あなたからはどう見える?」と、お互いの背景(ストーリー)を聴き合う対話へ繋げていく。
キャリアコンサルタントとしても、この「自己認知から始まる他者理解」こそが、多様な個性を活かす組織づくりの真の土台になると確信しています。
バイアスをゼロにすることはできません。
でも、「誰にでもあるよね」と認め合い、お互いの見え方の違いを認め合える心の余白を持つことは、今日からでも始められます。
組織を良くしようと奮闘する皆様のその優しさと熱意こそが、現場に「安心感」という温かい風を吹き込む一番の源泉です。
完璧な「偏見のない人」を目指すのではなく、まずは「自分自身のクセ」にクスッと笑ってみる。そんな温かいD&Iを、私たちと一緒にここから一歩ずつ始めてみませんか。

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